【プロ人材機構 高橋啓氏】「遠回り」と「失敗」が最強の武器になる。不確実な時代を生き抜くキャリア論

【プロ人材機構 高橋啓氏】「遠回り」と「失敗」が最強の武器になる。不確実な時代を生き抜くキャリア論

株式会社プロ人材機構
代表取締役
高橋 啓

キャリアをどう築いていくか。就職活動を控える多くの大学生にとって「絶対に失敗したくない」「早く正解を見つけなければ」と焦ってしまうテーマかもしれません。
今回は、株式会社プロ人材機構の代表取締役、高橋啓さんにお話を伺いました。25年以上にわたりヘッドハンターとして数々のビジネスパーソンを見てきた高橋さんが語るのは、あえて立ち止まる「遅考」の重要性や、失敗という「経験資本」の価値。高橋さんご自身の歩みと現在の事業から、未来を切り拓くヒントをお届けします。

現在の事業内容について教えてください

 私たちは、経営層やプロとして実績を積んだ50代後半〜70代の「シニア人材」に特化した人材あっせん業を行っています。私は、この業界に20年以上関わらせて頂いております。業界では、かなりのベテランですね。

 弊社の事業としては2つの柱があります。1つは企業の依頼に基づいたフルタイムのヘッドハンティング。もう1つは、週数時間や月数回といった柔軟な形で、社外役員や顧問として企業に参画していただく「プロビジョンシェア」という仕組みです。

 世の中には、年齢に関わらず第一線で活躍できる知見を持った方がたくさんいます。私たちは、シニアの方々が泥臭い実務の中で積み重ねてきた成功や失敗、意思決定の蓄積を「経験資本(Experience Capital)」と呼んでいます。この素晴らしい経験資本を、壁にぶつかっているスタートアップや後継者不在の中小企業へ循環させ、日本経済を底上げしていく。これが私たちのミッションです。

事業の根底にある「年齢」に対する想いとは?

  私は誰もが「年齢に関わらないキャリア」を歩める社会に変えていきたいと思っています。シニアも若者も本質的には「フラット」であるべきだという考えです。そこで大切にしているのは、聞こえの良い部分だけではなく、ある種の「厳しさ」です。「年齢を言い訳にしてほしくない」という想いが強くあります。

 それはシニア層だけでなく、若い世代に対しても同じです。「若すぎるから」「経験がないから」というのも、一つの言い訳に過ぎません。自分自身に制限をかけず、社会が勝手に決めた「年齢という物差し」を取り払いたい。学生さんだからといって優しく接するのではなく、一人のプロフェッショナルとして、本質的な厳しさを持って向き合いたいと思っています。

大学生時代はどのような学生生活を送っていましたか?

 そうですね。もともと起業しようと思っていましたので、単位は早々に取り終えて、就職活動を早くから始めてましたね。

 私の学生時代は、ちょうどベンチャー経営者がメディアに多く出始めていた時期でした。草創期の孫正義さんとか、あとは、パソナの南部さんとか、HISの澤田さん。ベンチャー三銃士と言われていました。私は有名なベンチャー企業の経営者に自ら手紙を書いて会いに行ったり、集まりに顔を出したりして、たくさんの大人に会いに行きました。 その中で「一番すごい!この人のもとで働きたい!」と心底惚れ込む経営者に出会い、その会社に就職しました。インターンシップはおろか、インターネットはまだ主流ではなくて自分で情報を取りに行く必要があったので、可能な限り動いていました。起業ってなんだかかっこいい。そこから入ってましたね。

大学卒業から現在までに至るまでのストーリーについて教えてください

 大学卒業後、すぐの起業は諦めました。まだまだ経営者の皆さんとは距離があると思ったのです。代わりに惚れ込んだ経営者のもとで仕事をしたいと思い就職しました。それがキャリアのスタートです。その後、ヘッドハンティング会社の立ち上げに参画し、そこから20年。経営層専門のヘッドハンターとして無我夢中で走ってきました。

 転機となったのは、長くお付き合いしてきた優秀な候補者の方々が60代を迎えた時のことです。いかに優秀な経営者であっても、年齢というだけでパタッと声がかからなくなってしまう。人間的な素晴らしさもスキルもあるのに、年齢だけで排除されるのは「もったいない」と強い疑問を感じました。

 私自身、シニアの知見を社会に流通させるビジネスの確信を持っていました。でも、「伸びると思うアイデアがあるのに、会社という傘を借りたままでは卑怯だ。人生をかけて自分で証明しよう」と決意し、2024年に独立してプロ人材機構を創業したのです。

 実は、このビジネスの起点は私の幼少体験から。私の実家はあまり裕福ではなく、高校卒業後は職人になることを期待されていました。でも私はどうしても大学に行きたかった。当時、定年退職を控えていた義足の父は、私を大学に行かせるために必死で再就職先を見つけて学費を稼いでくれました。きちんとお礼を言えないまま父は亡くなってしまいましたが、今の事業を通じて「自分の父は世界一だ」と語り続けることが、私なりの恩返しだと思っています。


就職活動やビジネスでは「スピード」や「効率」が求められがちです。焦りを感じる学生も多い中、高橋さんはあえて「遅考(遠回り)」の重要性を説かれていますね。

 ビジネスの世界でも、確かにスピードは正義とされがちです。しかし、速さだけを求めて“間違った前提”のまま全力疾走してしまうと、取り返しのつかない失敗を招く危険性があります。だからこそ、直感による「速い思考」だけでなく、あえて立ち止まって時間をかけ、論理的に物事を検証する「遅考」が重要なんです。

 この遅考を通じて「そもそも誰に価値を届けるべきか」を問い直し、解像度を高めることが欠かせません。学生の皆さんにアドバイスをするなら、「解像度が高い方がよい(何がやりたくて、なぜ今か)」ということです。全て仮説を持つためですね。

 もちろん人生何があるか分かりませんし、予定通りにいかないことばかりです。ただ、仮説がないと、自分がどこに向かっているかすら分からなくなってしまいます。遠回りしてでも「なぜ今か」を問い直し、しっかりとした仮説を持つことが、不確実な時代を進むための羅針盤となります。例えば、自分の趣味の世界を持つことは非常に有意義だと思います。経営者となって休みなく働く今となって、自分の趣味の時間の大切さを改めて感じております。 例えば私なら、走ること(ランニング)や絵画、あるいはハロウィンで全力の仮装を楽しむといった、一見仕事とは無関係な「遠回り」に見える趣味を大切にしています。こうした多面的な活動が、最終的には自分の目的に一番早く近づく力になると感じます。

キャリア選びにおいても、その「遠回り」は活きてくるのでしょうか

 もちろんです。キャリアの選択に「正解」はありません。スタートアップにはスタートアップの、大手には大手の良さがあります。毎日会社のために頑張って夜にお酒で愚痴を流すのも、土日関係なく仕事し続ける刺激的な毎日も、どちらも素敵な人生です。

 ただ、自分がどちらの世界にいて、どちらの価値観が根深いのかを知らないと成功は遠のいてしまいます。 自分がどのような価値観の持ち主なのかを知るための試行錯誤は、決して無駄な遠回りではなく、自分自身の成功に近づくための必須のプロセスです。自分は、大手に入って世の中に大きなインパクトを与えたいと思う人がベンチャー企業に入ると少し違和感を感じるかもしれません。一方で、日々、自分の裁量で仕事を進めたいと思う方は大手に入ると満足度が高まらないかもしれませんね。

 思考としては例えば、なぜ、これをやるのか?を考える人はスタートアップ向き、どのようによくしていくのかを考えるのは大手向きかもしれません。インターンシップ、就職活動、SNSなどなど。Whyから始めることを世の中は称賛しますが、だいたいそれを語る人はひと握りのベンチャーやスタートアップ。多くの人は、過去の先人たちが創り上げたものを、効率化していくことで世の中を発展させて来ました。

高橋さんがこの事業の先に描く「未来」を教えてください

 私は、年齢や性別、あるいは障害の有無に関わらず誰もが対等に仕事ができる社会は、20年後には「当たり前」になっていると確信しています。

 なぜ今、私がこの事業に心血を注いでいるのか。それは、現在高校2年生の息子たちの世代が成人して社会に出たときに、その「当たり前の世界」が実現していてほしいからです。自分が動くことで、20年かかる変化を1ヶ月でも短縮できるなら、それが私の、そして弊社の「存在証明」になります。

 そして、そのフラットな世界で何より大事なのは、誰かに決められた正解を追うことではなく、「自分自身が一番だと信じられる道」を歩むことではないでしょうか。自分の志や、心の底からやりたいと思うことを中心に置いて生きる。息子たちの世代が社会に出たときに、不当に嫌な思いをせず、かつストイックに自分の実力を磨いて勝ち抜いていける、そんな「厳しくも平等な社会」、そして誰もが「自分が主役だ」と胸を張れる社会を早く引き寄せたい。これが、私がビジネスを通じて成し遂げたい志です。

最後に、これから社会に出る学生たちへメッセージをお願いします。

 私たちがシニアの方々を支援しているのは、彼らが遠回りして得た「失敗の蓄積」が社会の宝だからです。私たちが新しいことに挑戦するときも、ゼロから同じ失敗を繰り返すのではなく、過去に失敗を経験したシニア(経験資本)に伴走してもらうことで、無駄な失敗を防ぎ、事業の生存率を劇的に上げることができます。世の中の成功しているほとんどの会社は過去にあったサービスの再定義といえますから。

 裏を返せば、皆さんがこれから経験する「失敗」や「遠回り」も、将来誰かを助けるための貴重な「経験資本」になるということです。だからこそ、若いうちの失敗を恐れないでほしい。

 最近、多くの方と接していると、お金だけではない「かっこいいの定義」が変わりつつあると感じます。昔は大企業に入り、沢山のお金を集めて、良い家を買い、かっこいい車を購入する。しかし、そのような価値観だけではないというのは皆さんが一番よく知っているのではないでしょうか。自分の好きなことをする、自然と近い環境に身を置く。それぞれが自分の中でかっこいいというルールがある。

 私自身が一番大切にしている「かっこいい」は、自分の身近な存在を誇れることです。私にとっては「自分の父親が世界一だ」と自慢できることが何よりの誇りであり、それが事業の原動力になっています。皆さんも、誰と比較するでもなく自分が一番だと思える生き方、自分が最高だと思える志を追求してください。

 こうした「自分なりの物差し」で生きる人が増えている今、私たちも、そうした新しい価値観から学び、未来に先んじて備える柔軟な姿勢を持ち続けたいと思っています。世代を超えて学び合い、「どうありたいか」を大切にすることが、世代を問わず求められて行くと思います。皆さんは、時代の最先端を創り上げていっている方々です。是非、皆さんの視点と価値観を先輩たちにインプットして、お互いに協力して良き世の中を創っていきたいですね。早く社会に出て、一緒に仕事しましょう。

株式会社プロ人材機構
代表取締役
高橋 啓

山口県出身、千葉大卒。約25年の人材業界歴で3万人以上の経営人材を支援し、ヘッドハンターサミットMVPなど受賞多数。2024年に「プロ人材機構」を創業。年齢・性別などあらゆる壁を越えたフラットな世界を標榜し、シニアの経験を社会の成長資源に変える「シニアビジネス3.0」を提唱。地方企業の変革に伴走する情熱的なリーダーであり、私生活ではランナーとしての顔も持つ。経験資産を次世代へ繋ぐ市場を創り上げている。

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