
お仕事で一番楽しいと感じる瞬間はどんな時ですか?
言うまでもなく、生徒たちが合格してくれた瞬間ですね。当塾で頑張って努力してきた生徒さんが、目標としていた大学に合格したときの喜びを、一番近くで一緒に感じさせてもらえるところが、この仕事をしていて一番うれしいし、たのしい瞬間です。そのほかにも、卒業した生徒たちが遊びに来てくれるときとか、昔うちで働いてくれていた講師が遊びに来てくれるときなんかも、うれしい瞬間です。毎年、祇園祭にあわせて京都に来て、そのたびに顔を見せに来てくれる卒業生なんかもいて、彼らと「受験生のときにあんなことがあったよね。こんなこともあったよね。」みたいな話をするときは、最高に楽しいです。もちろんそれだけでなく、社員が結婚したり、お子さんが生まれたりしたときも、うれしいし幸せな気持ちになります。会社を設立して、しんどいことも色々あったけどここまで続けてこれて、本当によかったと、やりがいに感じます。
また、採用面接なんかも非常にたのしいです。一緒に戦ってくれる仲間が増えるわけですから、めちゃくちゃ楽しいです。特に正社員の方の面接は1時間以上かけてじっくりとお話を聞かせてもらいます。これからの日本でビジネスをする上では、どんな業界でも人手不足は深刻です。我々の教育業界は、子どもの人口が減る上に、働ける労働人口も減るという二重苦の中にいます。だからこそ、「採用を制する会社がその業界を制する」ことになります。教育は「人」が商品であり、人がする授業や指導がそのまま商品になる業界です。この人にどういうポジションで、どんな業務をしてもらい、誰と一緒に働いてもらったら一番ハマるかな、ということを考えながら話を聞くのが、とても楽しいですね。

貴社の強みや差別化のポイントは何ですか?
弊社では、講師と事務職の二通りの人材を募集しています。
講師について言えば、予備校業界の先生の多くが正社員雇用ではない中、京都医塾の講師は正社員であるということ。そして、大学入試の中でも最難関の医学部入試を専門に扱っている会社であること。この時点で、業界の中ではかなり特殊です。
他にも、福利厚生として社内にトレーニングジムや食堂を作ったり、スーツ手当を作ったりといった新しい取り組みもしています。
また、かつては「ガラパゴスの会社」だったところから、AI化・DX化を頑張って進めています。例えば、授業スタイルもホワイトボードからiPadを導入し、今年8月には電子黒板を導入しました。業界にありがちな「ブラックな会社」というイメージを払拭し、社員のワークライフバランスも取れるように、制度を毎年更新し続けています。

会社を設立し、社長に就任された際の、リアルな心境をお聞かせください。
あの時はとにかく必死でした。社長に就任した当初は、私はもともと国語講師で、生徒のことと教科指導のことしか考えたことのない人間だったので「とにかく何をしたらいいか分からない」状況でした。BS・PLの見方も知らない。だから、分からないからとにかく本を片っ端から読みました。

経営哲学に影響を与えた書籍や人物はいますか?
経営を学ぼうと思って読んだ本とは別で、たまたま知り合った方から教えてもらった上杉鷹山の本です。
上杉鷹山の物語は、凋落した藩を立て直す際、若い藩主が「これは一人では無理だ」と感じるところから始まります。自分の志に合う仲間を集め、改革チームを組んで、一つずつ具体的な政策をやっていくというストーリーです。
この話が、会社を立て直す当時の私に勝手にシンパシーを感じさせて、「僕一人では無理だ」と、本当に信頼できる仲間を集めて、一つずつ会社を変えていかなくてはならない、と強く思いました。

会社で取り組んできた改革の中で、最もエネルギーがかかったと感じるものは何ですか?
本当に全部ですね。
全ての会社やチーム、全ての人に「慣性の法則」が働いていると思うんですよ。つまり、何かを変えることって、本当にものすごいエネルギーがかかるんです。
例えば、生徒に美味しいパンを食べさせたいと、パン屋さんにお願いして毎朝配達してもらうという取り組みがあります。パンが冷えて美味しくなくなるからと、リベイク用のトースターを一つ導入するだけでも、大変なエネルギーがかかります。焦がしたらどうする、誰が掃除する、説明書はどうする、と。たったそれだけでも、無限にやることが出てきます。
「変化なき成長なし」ということを、社員たちにも事あるごとに伝えています。生徒が成長するためにも、生活習慣や勉強の仕方など、どこかを変えなくてはいけません。それは、会社も僕らも同じです。変えることはエネルギーがかかるけれども、変えないと成長できない。

昔ながらの「ガラパゴス」な会社から、フットワーク軽く変革を進めるための考え方はなんですか?
4年前に初めてiPadを導入し、ICT教育を始めようとした時も、従来の授業スタイルを変えることに対して、講師たちからいろいろな意見が出ました。
「手を動かして書くことに意味があるのでは。」と反対する意見もありました。一方で、「生徒が書かなくて済む分、考えて覚えることに時間を使えるから素晴らしい」という意見もありました。
しかし、「大変だ」と言って変化を拒むのではなく、良いと思ったものは生徒たちのためにもどんどん取り入れて、京都医塾の強みにしていかなければならない、と考えました。最終的には、半分は協議しながら、半分はトップダウンで「やろう」と進めました。

今後5年、10年といったスパンで描く事業展望を教えてください!
一つは、オンライン校事業の強化です。教育の地域格差は深刻です。
地元の塾では、ある一定レベル以上の受験には対応できないと言われたというお話も伺います。塾がある近隣の中核都市まで片道1時間半かけて送り迎えしていたと保護者さまからお伺いしたこともあります。多くの地域では学校以外で大学入試のための学習ができる場所がオンデマンドのサービスに限られることも。
その意味では、高卒生については京都に来ていただいて日本で最高品質の教育サービスを受けていただきたいと思っています。学校があり、京都に来ることが難しい中高生の現役の生徒さんについても、同じ最高品質の教育サービスを届けたい。その想いでオンライン事業を強化しています。
まずは対面の授業をICT化する必要があると考え、先駆けてiPadを導入していましたが、この度、電子黒板も導入しました。今後は、電子黒板を活用した集団授業を、全国の生徒さんに高いクオリティで届けていきたいと考えています。

伊藤さんご自身の今後のキャリアビジョンをお聞きしたいです!
今後も「一人ひとりと真正面から向き合う教育」を続けること。何年たっても、それだけは揺らぐことはありません。
そのうえで、「日本一の学習環境」を目指し、今後も成長し続ける企業でありたいと思っています。そのためであれば、私自身は今のポジションに固執するつもりはありません。僕が退いた方がこの会社にとって良いと思ったら、そのタイミングで後進の人に会社を譲ろうと思っています。
これは、社内の人事異動と同じです。ある部署の部長が一生懸命頑張って、やれることを一通りやり終わったら、次の人に代わった方が、次の人のアイデアで成長するチャンスがあるからです。私自身にも同じことが当てはまると考えています。

最後に、キャリアパスについて悩む学生に向けて、どのようなメッセージを送りますか?
若いうちは、とにかく成長することが一番大事です。
成長しようと思ったら、自ら成長しようと思わないと、人は成長できません。ビジネスの世界では、「気づいたら成長していた」ということは、あまりありません。成長する気を持つかどうかが、自分自身の価値を決めます。
完璧を目指すよりも、まずやってみよう。色々と悩むこともあるでしょうが、やはりそこでやるかやらないか。成長するかしないか。一歩踏み出せるかどうかが重要だと思います。


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