設計とビジネスを”翻訳”する
ご自身を表すキャッチコピーを教えてください。
私自身のキャッチコピーは「設計とビジネスをつなぐジェネラリスト」です。 私はもともと川崎重工業で6年半、船の設計に携わっていました。設計者は技術のプロフェッショナルですが、ビジネスの側面には疎い傾向があります。逆に、営業やマーケティングの担当者はビジネスには精通しているものの、設計の細部までは理解していません。この両者の間に存在する分断に、私は常に違和感を抱いていました。
この両者の間に立ち、それぞれの言葉を「翻訳」し、プロジェクトを円滑に進める役割が必要だと感じたのです。特定の分野を極めるスペシャリストではなく、専門性の異なる人々や組織をつなぐジェネラリストになりたい。そう考え、設計の世界から一念発起し、ビジネスを体系的に学ぶためにアクセンチュアへの転職を決意しました。この経験こそが、私のキャッチコピー「ジェネラリスト」の原点です。

「天翔る」が描く、
学園祭のような働き方
今一番力を注がれている事業について教えてください。
現在、私が独立して立ち上げた経営コンサルティング会社「天翔る」の事業に全力を注いでいます。アクセンチュア時代と事業内容は大きく変わりませんが、最も強くこだわっているのは「従業員を誰よりも大切にする」という点です。
通常、ビジネスではお客様が第一と考えられがちですが、私はまず従業員が幸せに、そしてプロフェッショナルとして成長できる環境を整えることが、結果としてお客様に最高の価値を提供することに繋がると信じています。
私が目指すのは、仕事がまるで「学園祭」のようになる会社です。学園祭では、様々な個性を持った人々が一つの目標に向かって協力し、一体感を持って何かを創り上げますよね。仕事も本来、そうあるべきだと考えています。気が弱い人も、特定の分野に特化したスペシャリストも、誰もが自分の居場所を見つけ、心から「楽しい」と思える。そんな会社を実現することが、今の私の最大の注力事業です。

巻き込む力、動かす力、
ロジックの先にあるファシリテーション
ズバリ、ご自身の強みは何だと思われますか?
私の強みは、コミュニケーション能力、特に「ファシリテーション能力」だと自負しています。誰かに一方的に答えを教えるのではなく、対話を通じてその人の中から良いところやアイデアを引き出すことを常に意識してきました。
「ファシリテーション」と聞くと、その場の機転で議論を回すイメージがあるかもしれませんが、私は「準備が8割」だと考えています。この会議のゴールは何か、目的からずれないように議論をどう導くべきか。事前に目的を明確に定めることが最も重要です。
コンサルタント時代、企業のビジョンを策定するワークショップを何度も担当しました。そこには役職も部門も異なる人々が集まります。上司や部下といった立場を超えて、全員が同じ土俵で意見を言えるような場を作る。そこで私のファシリテーション能力が活きたと実感しています。コンサルタントにはロジカルシンキングはもちろん必要ですが、それはできて当たり前。それよりも、人々を巻き込み、同じ方向を向かせて結果を出すためのファシリテーションやストーリーテリングの力こそが、真に価値を生むのだと信じています。

プロの自覚と後輩の退職から見えた使命
大学卒業から創業までの道のりを教えてください。
私のキャリアは、後輩の挫折という痛ましい経験が大きな転機となりました。ファーストキャリアとして川崎重工を選んだのは、大学の学校推薦がきっかけです。インターンシップに参加し、「船の設計ってかっこいいな」と純粋に感じました。現場には、いわゆる元ヤンキーのような少しやんちゃな経歴を持ちながらも、班長として皆をまとめ、ものすごくかっこいい働き方をしている人たちがたくさんいました。彼らのような存在に憧れて入社を決めたのです。
キャリアの転機は2つあります。1つ目は、現場でプロとして認められた経験です。入社当初は設計だけを担当する「よそ者」扱いでしたが、とにかく現場に足を運び、自分にできることを必死にこなすうちに、少しずつ信頼を得られるようになりました。ある時、現場の方々が私を「設計のプロ」として認めてくれた瞬間がありました。プロフェッショナルでありさえすれば、どんな背景を持つ人とも対等に話ができるのだと実感しました。
もう1つの転機は、もっと切実な出来事です。設計がやりたくてキラキラした目で入社してきた後輩が、ある日突然「もう辞めたい」と言ってきたのです。彼は作業に追われ、人間関係に悩み、疲弊していました。彼のような真面目で少し気が弱い子に、私が居場所を作ってあげられなかった。それが本当にショックで、無力感を覚えました。この経験から、スペシャリストはスペシャリストのままで、どんな個性を持つ人にも「ここにいていいんだ」と思える場所を作りたいと強く思うようになりました。そのために私は、皆をつなぐジェネラリストになろうと決意したのです。これが、私がビジネスを学び、起業に至った最大の原動力です。

禁酒と睡眠が最高のパフォーマンスを生む
仕事において、大切にしているマイルールはありますか?
私のマイルールは2つあります。それは「平日にお酒を飲まないこと」と「たくさん寝ること」です。これはアクセンチュア時代に身についたジンクスのようなもので、お酒を飲んだ次の日は、明らかに頭の回転が鈍るのを実感していました。自分のパフォーマンスが落ちるのが嫌で、自然と平日は飲まなくなりました。
もちろん、起業してからは会食も大切な仕事の一部なので、状況は少し変わりました。それでも、翌日に集中力が必要な仕事が控えている時は、今でも飲まないように徹底しています。最高のパフォーマンスを発揮するための、私なりの自己管理術だと考えています。

未経験コンサルでの苦闘
メモが導いた成長
これまでの人生で最大の失敗談をお聞かせください。
私の人生で最大の失敗は、川崎重工からアクセンチュアに転職した直後の3年間です。31歳手前で未経験のコンサル業界に飛び込んだのですが、一番下のランクで入社したにもかかわらず、周りの若手よりも全く仕事ができませんでした。
特に足りなかったのが、コンサルティングスキル全般です。ロジカルシンキングやファシリテーションといった、答えのない問いに対して最短距離で答えを導き出すためのスキルが、私には全く備わっていなかった。プロジェクトによっては人間関係で苦労することもありましたが、今思えばそれは性格の不一致ではなく、単純に私のスキル不足が原因だったのです。
どうやって乗り越えたかというと、やったことは一つだけです。上司や先輩に言われたことを、一言一句すべてメモに取り、それを一つずつ完璧にできるようになるまで繰り返しました。最初は紙に、途中からはPCでひたすらメモを取り続けた。その地道な積み重ねのおかげで、徐々に仕事がうまくいくようになり、「コンサルがうまいね」と言われるまでになれたのです。この経験は、私にとって非常に大きな財産であり、自己成長の重要性を痛感させてくれました。

眠ることも、戦略のうち
休日はどんなことに時間を使われていますか?
「休日の過ごし方は、もしかしたら面白くないと感じるかもしれませんが、私はひたすら寝ています。最低でも8時間、休日は12時間くらい寝ないと頭が働かない体質なんです。平日は禁酒している分、休日の夜は思いっきり飲みに行きます。そのために、昼間はたっぷり寝てコンディションを整える(笑)。
私は仕事のスイッチが一度切れると、なかなかオンに戻せないタイプです。だから月曜から金曜までは、常に仕事モードで集中しています。その分、休日は心身ともにしっかりと回復させることを大切にしています。一時期、仕事が忙しすぎて体調を崩した経験もあるので、何よりも睡眠時間を確保することは譲れません。これは、最高のパフォーマンスを維持するための、私にとって不可欠な時間なのです。

エアリズムTシャツが、
思考を研ぎ澄ます
ご自身の性格や仕事スタイルを表す「こだわりアイテム」はありますか?
私らしさを表すアイテムは、今着ているこのユニクロのエアリズムTシャツです。同じものを15枚くらい持っていて、基本的にこれしか着ません。
スティーブ・ジョブズのように格好いい理由があるわけではなく、単純に私がものすごい暑がりだからです(笑)。このTシャツは着心地がサラサラで、一度着たら他の服が着られなくなってしまいました。下のパンツもユニクロのストレッチが効いたものです。見た目ももちろん重要ですが、それ以上に自分の気分を左右する「着心地」を何よりも重視しています。常に最高のコンディションで仕事に臨むための、私なりのこだわりですね。

全力の今が、理想の未来を作り出す
事業、またはご自身の人生についての今後の展望を教えてください。
私はあまり中長期的な目標を立てるタイプではありません。「今、目の前のことを全力でやる」というのが私のモットーです。ですから、今は立ち上げたばかりの会社「天翔る」の事業を軌道に乗せることに集中しています。
繰り返しになりますが、私が作りたいのは、気が弱い人や、特定の分野に特化したスペシャリストなど、どんな個性を持った人でも安心して自分らしくいられる場所。そんな「学園祭」のような会社を本気で目指しています。そのために、従業員みんなでプロジェクトの成功を祝う派手な打ち上げなんかもやってみたいですね。コンサル時代には、なかなかそういう機会がなかったので。
人生においても、仕事とプライベートをきっちり分けるのはあまり得意ではなく、どうしても仕事中心になってしまうと思います。しかし、それが私のスタイルです。まずは目の前の仕事に全力投球し、その先に理想の会社の姿があると信じています。

未来は、目の前の全力から拓ける
これからファーストキャリアを歩む大学生へメッセージをお願いします。
目の前のことをひたすらやっていくと、自然とプロフェッショナルになっていきます。
プロフェッショナルになるといろんな人が認めてくれるし、やっぱり変化にも強くなります。
私自身、これまで中長期的なキャリアプランをほとんど考えずに、ただ目の前の仕事に没頭してきました。その経験から皆さんに伝えたいのは、「目の前のことに必死に取り組んでいれば、未来は自然と拓ける」ということです。
一つのことに夢中で取り組んでいると、人は自然とプロフェッショナルになります。プロフェッショナルになれば、周りの人が認めてくれるようになり、新しいチャンスが舞い込んでくる。そして、世の中がどう変化しようと「自分なら大丈夫だ」という自信もついてきます。
将来のキャリアが描けなくて、不安に思っている学生さんも多いかもしれません。しかし、私のような人間もいます。無理に遠い未来を描こうとせず、まずは目の前の学業や活動に全力で打ち込んでみてください。そうすれば、必ず良い未来が待っていると私は信じています。


頑張ってくださいー!新会社!