
出会いが新しい言語を連れてきた
7か国語を操れると伺いました!どのように学んでこられたのでしょうか?
「操るとまではいかないですが照。ほとんどの言語は“勉強”という形ではなく、人との出会いの中で自然に身につけてきました。英会話学校に通ったことも塾に行ったこともありません。スペイン語は絶対に前世です笑。大学院時代に3ヶ月で習得しました。ラテンダンスを始めたら周囲がスペイン語ばかりで、自然に喋れるようになったんです。イタリア語やドイツ語も同じように、出会った人や仕事の場で必要になったからこそ学んでいった。私にとって言語は“人との出会い”がもたらしてくれる贈り物なんです。」

大切な人の喪失が教えてくれた“ゆっくり生きる”こと
“生き急いでいた時期に立ち止まらざるを得なかった”というお話がありましたが、どのような経験だったのでしょうか?
「20代前半まで、生き急ぐように走り続けていました。そんな中、大切な人を失い、頭が真っ白になってしまったんです。自分は大丈夫だと思っていても、行動と心が伴っていない状況で、周囲を二次的に傷つけてしまうこともありました。助けを頼むことができず、逆に気を遣われるのがつらくて一人になっていく…。そうした経験を経て、ようやく“ゆっくり生きること”を学びました。」

コンサルティング=応用人類学
大学院では応用人類学を学ばれたとのことですが、具体的にはどのような学問で、今のキャリアにどうつながっているのでしょうか?
「応用人類学は、文化や社会を観察し、そこから課題解決の糸口を探る学問です。フィールドワークやインタビューを通じてデータを収集し、分析して結論を導き出す。その手法はそのままコンサルティングに通じています。デザイン思考やUXの研究も、実は人類学的アプローチの延長線上にあるんです。私は“コンサルティングは応用人類学そのもの”だと感じています。」

コンサルタントとして大切にしていることはありますか?
「できるようにする」——enablerの役割
「私にとってコンサルタントは“enabler”、つまり“できるようにする人”です。分析して結論を示すだけではなく、クライアント自身が考え、動けるように支援すること。待つことも含めて、相手が気づく瞬間を大事にします。経営コンサルとして、火消し役のように課題を整理し、プロジェクトを前に進める役割が多いのですが、ゴールはクライアントが自身で考え、自走できる状態をつくること。それができたとき、『いいコンサルができたな』と思えます。」

「就活はデート」——出会いと魅力を伝える場
就職活動についてですが、”辛い”というイメージがあります。志野さんは就活についてどのように考えていらっしゃいますか?
「私の就活は少し特殊でした。ボストンキャリアフォーラムに妹の付き添いで行った日のうちに、出会った企業の方と話が進み、その場で内定に至ったんです。いわゆる“ESを何十社も出す”というやり方はしていませんでした。
日本の学生さんに伝えたいのは、就活は恋愛だと思った方がいいということ。エントリーシートはラブレターだと思って、自分の魅力を“自分の言葉”で、相手に届くように書くこと。面接はデートだと思って、模範解答を並べるのではなく、目の前の人を理解しようとする傾聴とやり取りを大切にすることです。
さらに大事なのは、“相手も人間だ”という実感です。面接官はAIでもロボットでもなく、好意や熱意は伝播します。こちらが相手の良さを見つけようとすると、相手もこちらの良さを見つけようとしてくれる。だから形式的な正解を探すのではなく、人と人との関わりとして臨むべきなんです。
実際、私は面接の場で「いわゆるガクチカってすごいの?」と問い返したくなることもありました。学生が“特別な成果”を強調しようとするけれど、必ずしもそれが人間的な魅力の証明にはならない。むしろ、“朝起きるのがつらかったけれどどうにかして大学に行った”とか、一見なんてことない日常のストーリーの方が、その人らしさが伝わってくる。
だから私は学生に、“就活を試験ではなくデートだと思って楽しんでほしい”と伝えています。過程そのものに意味があり、そこに成長や人間的な魅力が滲み出るからです。」

「チェックリスト型の目標」からの解放—— どんな自分でいたいのか
大学院を卒業されてから現在に至るまで、どのようなキャリアの道を歩んでこられたのか教えていただけますか?
「大学院では応用人類学を専攻し、コロンビアで国内避難民(IDP)支援のプロジェクトに関わりました。そこで国連と協働する機会をいただき、12歳から掲げていた『国連と働く』という夢が叶ったんです。ところが——ここで“頭が真っ白”になりました。理由はシンプルで、私はそれまでチェックリスト型に目標を積み上げ、達成=完了として生きてきたから。最大のチェックが付いた瞬間、次に何を目指すかの“在り方”が空白だったのです。
さらに、避難民領域の重い現場に長く向き合った反動もあり、精神的な疲弊を自覚しました。そこで一度、妹に合わせてボストンキャリアフォーラムに行きました。ボスキャリでは、面白い人たちに出会って、話で盛り上がっていたらいつのまにか内定をもらっていたという感じでした笑。その後は流れに身を任せて日本へ帰国。デロイトに入社し、仕事に熱中しました。その後、ポルトガルのワーキングホリデーやバルセロナでのヨガ資格取得を挟み、ビザの切り替えをきっかけに日本へ帰国。AI系のコンサルとして独立し、いまは企業支援と並行して、学生プログラムで若い人の伴走もしています。
この一連の変遷で私が掴んだのは、“何になるか”ではなく“どうありたいか”という視点です。チェックを埋める生き方は、チェックが埋まった瞬間に燃え尽きやすい。だから私は、『毎日どんな自分でいたいか』を先に置くようにしました。優しくいたい、好奇心に忠実でいたい、周囲の人を“できるようにする”存在でいたい——在り方を先に決めると、次の選択が自然に立ち上がる。学生にも、職業名より“自分の在り方”を言語化することを勧めています。」

学生の相談には時間を惜しまない
学生との関わりについてもぜひお聞きしたいです。どのような形でサポートや交流を続けていらっしゃるのでしょうか?
「私が運営する学生プログラム(Global Challenge Program)では、すでに40〜50人の卒業生がいます。今でも『元気をもらいたくて来ました』と相談してくれる学生が多いです。声をかけられたときにすぐに時間を提供できるように意識しています。学生には『○○になりたい、じゃなくて、どういう人でいたいかを考えてみて』と伝えています。」

身近な人の魅力に気づけば、自然と縁は広がる
志野さんのお話には「魅力的な人たちとの出会い」が多くありますが、どうしたらそうした出会いを得られるのでしょうか?
「まずは自分や身近な人の魅力に気づくことです。自分の魅力を感じることができると、人の良さにも気づきやすくなる。そして接点を広げることも大切。新しい場所に行くのが苦手でも、日常の中で『この人のこういうところが素敵だな』と感じるだけで出会いは広がっていきます。そういう感覚を持つ人は自然と周囲からも好かれる。出会いは特別な場に行かなくても、日常の中で築けるものなんです。」

ありがたい巡り合わせという考え方
自分の”やりたい”を貫く志野さんの恋愛観も気になります!
「大学時代から常に好きな人がいて、国を変えるたびに泣いていました。恋愛は思い通りにいかず、逃げたいのに逃げられないジレンマがある。でもその葛藤を乗り越える経験が人を成長させると思います。今は、やりたいことを一緒にできるパートナーがいます。多様な経験を持つ彼だからこそ、私のキャリアも理解してくれる。ありがたい巡り合わせに日々感謝しています。」

「何になりたいか」よりも「どうありたいか」
最後に、これからキャリアを築いていく学生たちに向けて、どのようなメッセージを伝えたいですか?
「“何になりたいか”よりも“どうありたいか”を考えてほしいと思います。優しくありたい、自分に正直でありたい、楽しく生きたい。そうした在り方を掲げることで、日々の行動や選択が変わってきます。私自身、チェックリストを追う生き方から在り方を大切にする生き方に変わったことで、ようやく心から感謝できるキャリアを築けるようになりました。ぜひ恐れずに、“どういう自分でありたいか”を想像してみてください」

